サイバドールは・・・の夢を見るか



 時計は1時を指している。深夜……
 サイバドール・レナは眠れなかった。
 メイと和也の声が……聞こえてくるからだ。

(和也さん、だめです、そんなとこ……舐めちゃ……きゃふぅ……うん)
(メイのここ、もうこんなになってるよ)
(ヤ、ヤダ……恥ずかしいです、もう見ないでください……)
(こんなに固くして……メイはエッチだな)
(和也さんの……ください……は、早く……)

 我慢しきれず、レナは聴覚センサーの感度を一番低いところまで下げた。固
くつぶったまぶたの裏にボリュームメーターが浮き上がり、一瞬でゲージが下
がる。レナはたちまち無音の世界へと落ちていく。
 寝返りを打つと、レナの隣ではかすみがぐっすりと眠っていた。
 かすみには、メイたちのその声が聞こえているはずもなかった。
 レナに備わったサイバドールの聴力があればこそ、聞こえてくるくらいの、
じっとひそめた声だ。
 ここのところ、毎晩のように聞こえてくるのに、レナは寝る前に耳を”塞いで”
おくことができなかった。ふたりの声が聞こえてくるたびに、レナは自分
でどうしようもないほどに体が熱くなっていく。
 レナが自分自身に指を這わせると、そこはすでにじっとりとしていた。そっ
と指を動かすと、レナのそこは指の動きに合わせて柔らかく形を変えていく。
熱くて、ちょっとだけ濡れていて……
 夜ごとに、指の動きが激しくなっていくのが分かっていた。

  もっと……もっと……

 最初の夜は下着の上から軽くさするぐらいだったのに、今はもう、指で直接
いじらないと鎮まらなくなっている。

(声を出したら……かすみが……起きちゃう……)

 そうレナが思えば思うほど、レナの指は激しく動いた。
 きっと聴覚センサーがふつうに設定されていれば、レナの秘部からくちゃく
ちゃと水音がしているのに気が付いたはずだ。しかし、レナにその余裕はなかっ
た。音のない世界でレナはひたすら堕ちていく……
 空いている小さな手は、ふくらみかけの胸をまさぐる。手のひらには固くなっ
た突起の感覚。もう片方の手は下着の中で動き続けている。細い指がぐっしょ
りと濡れた花弁をなぞりあげる。

(ふ……はぁ……)

 ひだをなぞる指先が熱い。すぐに躰の芯の方からアノ感覚がこみあげてくる。
背筋がぞくぞくとしてくる。
 レナは我慢しきれずに下着の中に両手を入れて刺激していた。
 両手の指が代わる代わるに花弁に触れる。
 不意にレナの全身にしびれるような感覚が走る。

  きゃっうううん! な、なに?……

 ぷっくりとふくれた剥き出しの肉芽に指が触れたのだ。

(くぅぅ……ん)

 その瞬間、背中を丸めて躯をぶるぶると震わせながら、レナは達していた。
 かくんと全身から力が抜けていくのがレナには分かった。

(でも……きっと……和也とならもっと……)

 レナはそのまま眠りへと落ちていった。
 音のない世界に、さっきのメイの甘い吐息だけが繰り返し響いていた。(和
也さんの……ください……)


    §  §  §


「えーっっっ!」
 朝、レナの大声がかすみ荘に響きわたる。
 今日は、1分の1メイと5人の6分の1メイをつなぐとメイが倒れてしまう
という現象の原因を探るために、ケイとメイの2人(+5人)が未来に行って
来る日だった。
「なんでレナちゃんがひとりでお留守番なのよ〜」
「頼むよ、僕もどうしても抜けられない光子力応用Tの実験があるんだ」
 和也はレナに手を合わせてお願いする。
 レナは、ちょっと誇らしげに顔を赤らめながら答えた。
「わかったわよ。レナちゃんだってお留守番ぐらいできるわよ」
「ありがとう、レナちゃん」
 ……というわけで、お留守番をまかせられたレナだったが、おとなしく留守
番できていたのは、ほんの30分ほどだった。
 メイもケイもいない。和也は大学、マミは未来に帰ったままだし、サラも社
長に呼ばれて未来に行っている。イカリヤは和也が大学に持っていったままで、
そのうえ昼の楽しみの「愛つむ2」はわけのわかんない特番でお休みときて
いる。
「たいくつ〜〜、たいくつ〜〜〜〜う〜〜〜」
 和也のベッドの上でごろごろと転がりながら、レナはブーたれている。
 レナでなくても、かなり持て余す退屈さだろう。
 転がりながら、不意にあることがレナの頭の中に浮かぶ。

(このベッドで、和也とメイが……)

 レナの中に、言葉にしがたい感情がわき上がってくる。嫉妬や羨望、あるい
は恋慕や劣情といった「単語」では簡単にくくれない、それらの入り交じった
ような、まったく別のような……
 レナは、必死にそれを鎮めようとした。ベッドから体を起こして、ようやく
落ち着いた気がしたが、今度は涙があふれ出してきた。
「ぐすっ……何なのよぅ……もう」
 そのとき、向かいのかすみの部屋の窓が開く音がした。
「レナちゃん、そっちにいるの?」
 窓越しに千草の声がする。見ると、かすみの部屋から千草が顔を出している。
レナはあわてて涙をぬぐうと、窓から顔を見せた。
「うん、ここだよ、千草ママ」
「散らかしちゃダメよ、和也くんの……」
 突然の隣室からの音に、千草の声がかき消される。
 ズン、と低く震えるような音が響く。そしてモーターの回転が上がるような
低音から高音へとつながる連続的なノイズ……
「千草ママ!敷島、いるよ!!!」
「そうみたいね」
 千草はちらりと203号室に目をやると、ひらりと身を躍らせて、はしごに
足をかけた。
 ほっほっほっっと小さくかけ声をかけながら、軽やかに渡ってくる。
 千草がはしごを渡り終えたちょうどそのとき……

  ガシュゥ!!!

 ひときわ大きな音が響く。それきり、203号室は静寂を取り戻してしまう。
「また逃げられちゃったね、千草ママ……」
「そうね」
 いつものこと、といった顔で千草はニコニコしている。
「どうしたのレナちゃん、今日は。ひとりでお留守番?」
「……うん」
「どうしたの?元気ないわね」
 千草は、じっとレナが口を開くのを待っているようだった。
 レナも、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。ただ、それをどう言
葉にすればいいのかがわからなかったのだろう。
「ねえ、千草ママ……レナちゃん……どうしたらメイに勝てるかな……」
「え?」
 千草はレナの言葉に驚いたようだった。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない……」
「……メイちゃんとケンカでもしたの?」
 レナはうつむいたまま首を横に振った。
「和也ったら、メイとばっかり……」
「メイちゃんと……何?」
「レナちゃん、どうしたらもっと色っぽくなれるかなぁ」
 千草は、それで全てを理解した。
「あらあら、レナちゃん、和也くんとしたいの?」
 ストレートな千草の問いに、レナは思わずこくりと頷いてしまう。
「……」
「……」
 ふたりの間に、一瞬、無言の時間が流れる。
 さきに口を開いたのは千草だった。
「そうねえ……レナちゃんにはレナちゃんの魅力があるって、和也くんに分かっ
てもらわないと、ね」
 落ち込んだ様子でベッドの端に座るレナを千草はじっと見つめた。その眼に、
妖しげな光がかすかに浮かぶ。
 千草はカーテンを閉めると、レナの隣に座った。薄暗い部屋の中、ふたりき
り……
「こっちにいらっしゃい、教えてあげる」
 千草はそっとレナを抱き寄せた。
 レナは、少しだけ身をこわばらせていた。
 千草の顔はレナの目の前にあった。
「千草……ママ?……」
「ファーストキスは、和也くんとのために、とっておかなくちゃね」
 千草は、レナの首筋をつつっと舐め上げた。
「ひゃうぅぅん!?」
 レナはその刺激に嬌声をあげると、ぶるっと躯を震わせた。
 千草はその反応を楽しむようにさらに刺激を強めていく。レナの胸元をはだ
けさせると、その小さな先端に口づけをした。吸い上げては舌でもてあそぶ。
千草は、もう片方の先端も、指先で絶え間なく刺激している。

  自分でいじるのより、ぜんぜん気持ちいいぃよぉ……

「はあ……はあ……千草ママ……やぁ……やめ」
 レナの息づかいが荒くなる。
「ふふっ、ほんとうに止めていいの?」
 千草は意地悪そうに刺激を止める。
 レナはベッドの上で、ぐったりとしているが、千草を見上げるその眼はそう
は言っていない。千草はレナのスカートの中に手を入れると、ショーツの上か
ら割れ目をこすり上げた。指先はすぐにじっとりと濡れてくる。
「もうこんなにしちゃって……いっつも自分でしてるんでしょ?」
 その問いに、レナは顔を真っ赤にしてベッドに顔を伏せた。
「ちゃんと答えたら、もっとしてあげるわよ」
 そういいながら、千草は下着の上から指を動かし続けた。レナのショーツに
染みが広がっていく。
 ショーツをずらすと、千草はレナの秘裂を直接さわり始めた。赤く充血した
花弁は、まだ色も付いていない、綺麗なままだった。
「言いなさい、レナちゃん、ちゃんと私にお願いするのよ」
 その声がレナの背筋を撫で上げていく……

  もっと……して欲しい……レナのこと、ぐちゃぐちゃに……

 レナはもう千草の指のことしか考えられなかった。自分でするよりもこんな
に気持ちがいいとは思いもしなかった。
「……してるの、レナちゃん、毎日自分でしてる。あそこをいじり回してる…
…寝る前に、いじってるの……千草ママ、だから、もっとして……」
 千草はレナのそんな姿にぞくぞくと背筋を震わせた。
「いけない子……隣にかすみが寝てるのにね……」
「うん、レナちゃん、いけない子なの……だから……」
「おしおき、してあげるわ」
 そういうと、千草は自分の指をレナに銜えさせた。
「しっかり濡らしておきなさい」
 レナの小さな口を千草の指が出入りする。
 ひとしきり唇を刺激すると、千草は指を引き抜いた。レナの唾液がつっと指
先から垂れる。レナが物欲しげな眼で指に目をやったのを千草は見逃さなかっ
た。
「じゃあ、おしおき……よ」
「うん、して……」
 ずらしたショーツのすき間から、レナの中に千草の指が入っていく。すでに
濡れていたといっても、大人の指の太さに、レナはびくりと躯をこわばらせた。

  ……痛い!

 千草は中指を第二関節ぐらいまで沈み込ませたところで、いったん動きを止
めた。
「痛い?」
「……うん」
「ほんものの男の人はね、こんなもんじゃないのよ」
 そういうと、千草は一気に指を奥まで押し込んだ。
「ひぃぃっ!!」
 レナの悲鳴があがる。

  こんなに……痛いのに?ほんとなの?……でも……

 千草は指に伝わってくる熱を楽しむようにゆっくりと動かす。レナの一番奥
まで入れたまま、円を描くように。その動きに合わせて、レナの躯がビクンビ
クンと震える。

  でも……痛いのに……気持ちいいよぉ……

 レナの表情から、痛みに耐えるような気配が消えていく。
 すでに痛みよりも快感の方が勝っているようにみえた。
「これじゃ、おしおきにならないわね」
 言いながら千草は、指を出し入れし始めた。部屋の中に、じゅくじゅくと水
音が響く。
 レナは我慢しきれなくなって声を上げた。
「ふうぅ、やああ、いいよおう、気持ちいいっぃ」
「まだイッちゃだめよ。我慢しなさい」
 意地悪っぽく千草がレナに命令する。
「だって……だって……」
 レナがこらえきれないふうに首を横に振る。
「まだ、こっちが残ってるんだから、ね」
 千草はレナのお尻に左手をのばした。そうしてもう一つの穴を探り当てると、
中指をぐいと押し入れた。さすがにこっちはほんの少し指が入っただけでも
押し返そうとする。
「うぅん、千草ママ……そこは……違うよぉ」
「違わないわよ……ふふっ」
「いや……怖いよぉ……」
 千草はレナの言葉にも耳を貸さず、両方を刺激し続けた。
 後ろもすぐに柔らかくなり、千草の指を受け入れてしまう。
「ほら、大丈夫でしょう?」
 その言葉に答える余裕は、レナには、もうなかった。
「はあ、はあ、はあ……うぅん、くっ……」
 レナの息がとぎれとぎれになる。
 千草は、とどめとばかりに唇をレナの秘裂に寄せると、ぴんと勃った肉芽を
吸い上げた。わざと音を立ててしゃぶりながら、舌先でその先端を舐め上げる。

  な、何?ビリビリ……きちゃう……ぅぅ!

「だ、だめ、千草ママ、千草ママぁぁぁぁ……」
 レナはその刺激についに耐えきれずに千草の手の中で崩れ落ちた。
 荒い息づかいのレナは、時折躯をぴくんぴくんと震わせる。
「……可愛かったわよ、レナちゃん」
 千草が花弁から指を引き抜くと、レナの愛液がこぽっと音を立ててシーツの
上に垂れ落ちた。そして、レナのでぐっしょりと濡れた指を、千草はいとおし
そうに舐め上げた。
「もっともっと、いろんなことを教えてあげる。でも、今日はここまでね」
 レナは薄れゆく意識のなかで、小さくうなずくのが精一杯だった。


    §  §  §


 どたばたとした朝がまたやってきた。
 メイとケイはまだ帰ってこない。
「ねえ、レナちゃん、今日もお留守番頼んでいいかな?」
 和也がレナの前で手を合わせてお願いしている。
「いいよ、お留守番してるっ!」
 昨日とまるで違う反応に、和也はきょとんとした顔になる。
「え?」
「だから、お留守番してればいいんでしょ?まかせてよ!」
「あ、う、うん……よろしくね」
「ほらほら、和也、学校遅れるよ!」
「そうだった!!!じゃ、よろしくね、レナちゃん」
 そういうと、和也はかばんを背負って玄関から飛んで出た。
 朝の喧噪が一瞬で静まりかえる。
 ふと視線を感じてレナが振り返ると、かすみの部屋の窓から、千草がじっと
見つめていた。その視線に、レナの躯はぶるっと震えた。熱い……
「ねえ!千草ママ!今日も遊ぼうね!!」
 千草がこくりとうなずく。
 その瞳に吸い込まれるような感覚の中で、レナはショーツが湿っていくのを
感じていた……

〜Fin〜



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